帰り道。

私はなにもする気が起きなくて……ただ、和君のこいでいる自転車に乗ってる。自転車のチェーンの音だけが寂しく聞こえる。

「じゃあ、柚姫。着いたから…………」

「うん………アリガト。」

……言葉が出てこない。ゆっくりと自転車から降りる私。

「ごめんな……柚姫。」

和君の顔を見ると、下を向いて悲しそうだった。………何度も言ったのに。

『和君のせいじゃない』

……って。一番悪いのは、私。皆に頼ってばっかりだから、誰かが傷つく。

「もう、終わったことだよッ♪私、今日は疲れちゃったから、帰るね!送ってくれて、アリガトウ★」

明るく言ったけど、きっと和君にはバレてるってわかってた。

私は、自転車で進み始めた和君の後ろ姿をただ、見つめる事しかできなかった。

見えなくなっても、和君が帰った方を、ずっと見ていた。

「寒ッ………」

春の季節風が私の背中を押したように思えて、家に入った。………………

「ただいまぁ。」

玄関を開けると、見慣れない靴が一足、綺麗に揃っていた。

「柚姫!」

リビングから顔を出したのは、亜依だった。

「亜依?なんで、亜依が?」

「尋が、入れてくれた♪」

満面の笑顔。

「尋?………いるの?」

リビングを覗くと、普段キッチンにはいない尋がなにやら、ガサガサと…………

「お帰り~。ねぇ、柚姫…カップってどこ?ミルクティー作るんだけど。」

カップの位置も知らないやつがミルクティーなんか……

「一番左の棚。」

私は亜依の隣に座った。

「てか、亜依?智尋が作ったの、不味いよ?普段絶対にやらないから。」

それでも亜依は嬉しそうに笑っている。

「尋のだったらなんでも嬉しいから、いいの♪」

そっか…………好きだもんね。……………





あたりまえ……



だよね…………。