暑い日から涼しい日に変わる季節になった。
あれから俺は凪咲との時間が楽しくてしょうがなかった。
休みの日には凪咲と一緒に喫茶店に行き、他愛のない話をいつもしてた。
「悠ってさ?」
「ん?なに?」
「好きな人とかいるの?」
俺は急に言われたから口に含んでたコーヒーを吹き出してしまった。
「ゲホッゲホッ」
「あーあ汚いなー」
「凪咲が変なことを聞くからだろ」
「変なことじゃないし、気になったから聞いてみたの」
「内緒だな」って俺は照れ隠しながら零れたテーブルを拭く。
「えー内緒なの?」
「まぁな」
てかこんなに一緒にいるのに察しろとか思いながら凪咲を見る。
「教えてくれないの?」
これは言ってもいいのかな?
今すぐにでも凪咲が好きだって言いたい。
「じゃあ逆に凪咲はいないの?」
「え、、いるよ」
なんかショックだった。
俺じゃなかったらと思うとチクリと心が傷んだ。
「誰なんだよ」
「私も内緒」
正直誰か知りたかった。
凪咲のことを好きな男子がいるのか?
俺以外になるのか?
色んな感情が入り交じって脳裏を駆け巡っている。
いやここで言わなくちゃ男ではない。
やっぱり凪咲に俺の気持ちを伝えなくちゃ
それがフラれたとしても凪咲を支えることには変わらないのだから。
「あのさー」
「え、なに?」
凪咲はキョトンとした顔で俺を見ている。
「伝えたいことがあるんだ」
「それ私もあるよ」
「え、、、それって」
「もーこういう時はビシッと言ってよ」
「俺は凪咲が好きだ。これからもずっと俺の隣にいて欲しい。俺と付き合って下さい」
「やっと言ってくれた。うん。私も悠のこと好き。よろしくお願いします」
「やった!」と凪咲を抱きしめた。
「ちょっと人前だよ」
「あ、、そうだ」
周りの人達はなんなんだっていう顔でこっちを見ている。
でもおばさんだけは祝福の顔をしていた。

「ごめんなさい」って2人で頭を下げたら何もなかったように周りの人は視線を戻した。
「もー悠ってば」
「ごめんごめん」
お互いに顔を赤めながら笑いあっていた。
周りの人に迷惑かけたと凪咲はおばさんに謝ると
「いいのよ、ちゃんと幸せになるんだよ」と言ってくれた。
俺達はお詫びとして喫茶店を出てあの広場に向かうことにした。
「いつから私のことを好きなの?」
って凪咲が聞いてきた。
「俺は自転車ですれ違ったあの時から好きだよ」
そう俺はあの時から凪咲に恋をしていた。
運命だと感じた初めての恋だった。
学校で凪咲を見つけた時、なかなか話すことが出来ずにいたこと。凪咲から話しかけてくれた時、頭が真っ白になったし、めっちゃ嬉しかった。2人で学校をサボったこと。
初めての泊まりでお互いの過去を知れたこと。
色んな思い出が一瞬にして振り返った。
俺達は確かな想いをお互いに話せたから一緒になれた。
だから運命なんだ。
「凪咲は俺のことをいつから好きなの?」
「それは、、一緒に喫茶店のおばさんの家に泊まった時」
「そうなんだ」
「うん。てかその前から気になってはいたんだけど私だけが好きなのかなって思ったからなかなか言えなかったけど悠の過去とか気持ちを知れたから余計に好きになったの」

凪咲だけには伝えなきゃいけないことだし、なんか凪咲の存在が愛おしくて素直な気持ちを言えたんだよな。

「その時に私、悠を守るって決めたの」
「実は俺もその時に凪咲を守るって決めたよ」
「じゃあほんとに私達って運命共同体なんだね」
「うん。当たり前だよ」
今日言ったことに嘘偽りないほんとの言葉。
俺の人生に希望の光をくれたのは紛れもなく凪咲だった。
ホントの幸せって俺の近くにあったんだ。