俺は1269グラムの未熟児でこの世に産まれてきた。
出産予定日よりも3ヶ月早く陣痛がきて、緊急で帝王切開をすることになった。陣痛がくる前は母親と父親は仕事していたという。仕事中にお腹が痛くなり破水したのだ。救急車で病院に向かい今に至る。
手術は9時間超えた。
母親のお腹から小さな赤ん坊が産まれた。しかし、泣き声がなかったようだ。
必死に人工呼吸を行うと
オギャーオギャー
って泣いてくれた。その時母親にも安堵感があったようだ。
しばらく保育器の中だった。
しっかり栄養が必要だったから母親にもなかなか会えなかった。主治医いわく「栄養が摂れないと危ない」と宣告されたのだ。しかし、みんなの心配をよそに俺は栄養をしっかり摂れ、退院出来た。
両親の愛で育てられるところだが、両親は産まれてすぐに仕事に復帰したのだと親戚の人から聞いた。何日も帰らない日が続いた。その間、親戚の人のところで育てられた。
だから両親からの愛情よりも親戚の人の愛情が良かった。今は両親の仕事が落ち着いたということで一緒に暮らしているのだが、まったく馴染めないでいる。
それがきっかけで両親からは虐待に近いことをされているのだ。
普通の家庭に憧れていた。
学校から帰ると「おかえり」って言ってくれるような家庭が欲しかった。
それは凪咲も一緒だよって言ってくれた。
すると凪咲が
「悠、辛かったね、泣いていいんだよ」って俺を優しく抱きしめてくれた。
俺は全部隠さずに話すと体にまとわりついてた色んなものが無くなったのかずっと押し殺してきた感情が溢れ出して凪咲の胸の中で泣きだした。おばさんもつられて泣いてくれた。この瞬間とても言い表せないような幸せな時間が流れていた。そして、そのまま母親の胸の中で眠る赤ん坊ように眠ってしまった。

「悠と私は運命の出会いをしたんだよ」
「大丈夫、悠は私が守るから」
って凪咲が眠る俺の頭を撫でながら呟いた。

俺はしばらくしてから目が覚めた。
すると隣には凪咲が寝ていた。
初めて寝顔を見た。何とも言えないくらい可愛かった。
俺は凪咲の頬をさすりながら

「俺と凪咲はきっと運命なんだよ」

どっかで聞いたセリフみたいなことを言っちゃう。
凪咲は聞いてないのにね。俺クサイセリフ知ってたんだって思うとなんか恥ずかしくなった。
でもほんとにそう思えてくるのだ。俺は絶対凪咲を離さない。どんなことがあっても。

翌日俺達は一旦家に帰ることにした。
お互いに怒られる覚悟だったが、何も無かった。
その後、学校に行き普通に授業を受けた。
昼休みに巧が来て
「悠〜昨日何してたの?」
「あ〜サボった」
「悠がサボるとか珍しいね」
「てか起きる時間が遅くてさ、行くのがめんどくさかった」
とか適当な嘘をついてしまった。
巧は好きだけど昨日のことは黙っておこうと思った。
ごめんな巧。決して巧が悪いことではないんだ。
でもこれは軽々しく言ったらいけないと思うんだ。許してくれ。
「なるほどな。誰と話してたの?」
「話してないよ。ただ物思いにフケてた」
「悠らしい」
確かに俺らしいよね。
俺って深刻な考え事する時ってだいたいぼーっとする癖がある。
その時、廊下から凪咲が手招きしている。
めっちゃ可愛いって思っちゃった。
「どうした?」
「ううん、ただ話したかった」
「なに可愛いんだけど」
「ちょっと変なこと言わないでよ」
なにこれもうカップルやん。
まだ告ってないのにこの関係性は展開的に違うような気がする。
でも救いなのが人前ではないということ。
いつも誰もいないところで話しているから。
昨日の一件で俺達はより仲良くなったと実感している。
俺の隣にはいつも凪咲がいる。そしてずっと一緒にいると思う。
これは俺だけの特権なんだよね。
俺が凪咲を支えになるからな。