ジリリリリリリリリリリ
普段目障りな目覚まし時計も今日は心地よく聞こえる。
ちゃんと目が覚めたのは初めてだな。
いつもは目覚まし時計がうるさく、目覚めは悪かった。
そういう時って機嫌が良くない。だからこんなに機嫌がいいって相当珍しい。
恋って凄いな。
すぐに身支度をし家を出る。とにかく親より早く出るのが
日課となっている。
顔を合わせると何かと言われそうだから。
学校に着く時は校門は空いてないのだ。
それが分かっているから少し行ったら広場みたいなところがあってそこで寝てる。
でも今日は寝たくても寝れない。
とりあえず凪咲に早く会いたかった。
少しの間寝そべって空を見上げる。そこに影がきた。
「え、え、え、」と戸惑う。
なんと凪咲が俺の顔の上にいた。
「えーーーーー」
「おはよう。悠」
「お、、、おはよ」
「パンツ見た?」
「いや、見せてきたでしょ?」
「あはははははは」
凪咲は腹を抱えながら笑っている。
俺はこの状況を理解出来ていなかった。
「大丈夫、ちゃんとブルマ履いてるから」
「あ、そうか」
「変態な悠ね」
「それは凪咲な」
俺は朝から何を話してるのかって自暴自棄になりそうになっている。
そんな気持ちを知らずに凪咲は呑気な顔で俺の隣に座る。
「なんでここにいるの?」
「あー家に居たくなくて」
「同じだね」
「え?」
そこにいつも見せる凪咲の笑顔はなかった。
とても落ち込んでいる表情を見せていた。
「なんかあったの?」
「ただ家に居たくないだけ」
「あーそれ分かる」
俺もそうだから。
あの家にいると自分が壊れそうな感じがするから。
でも何も出来ない。親に逆らえない、、、
自分の心が潰されそうなくらい辛かった。
「え、悠も?」
「うん。そうだよ」
「悠は優しい人なんだね」
「え、なんで?」
「人の痛みが分かるから」
人の気持ちとか痛みとか分からない。自分のことで手一杯だから。でも凪咲のことを知りたいと思う。
どんな痛みがあるのか?
どんな気持ちでいるのか?
どんな生活をしているのか?
どんな人が好きなのか?
どんな小さいことでも知りたい。
もっともっと凪咲という人を知りたい。
これって恋の病なのかな?
凪咲のことを考えるだけで心臓がバクバクする。
「なんか私の顔ついてる?」
「え、あ、いやついてないよ」
「マジマジと見られると照れるからやめて」
って凪咲の顔は赤かった。
「え、いいじゃん」
「もーやだ」
って言いながらお互い笑っていた。
この時に俺は凪咲を守ろうと心に決めた。
「てかなんで俺がいるって分かったの?」
「朝早く起きたら親が喧嘩してから何も言わずに出てきたの。それでここの広場に小さい頃に遊びに来てて久しぶりに行ってみようかなって思ってたら悠が寝そべってたから脅かそうとしたの」
親が朝早くに喧嘩とか凪咲の家も相当ごちゃごちゃしてるんだな。
「あとさ、俺と自転車ですれ違ったの覚えてたよね」
「うん。だってあんな道ですれ違ったんだから」
「まぁそうだよな。なんであの道を漕いでたの?」
「うーん。気晴らしかな」
なんか凪咲の表情が冴えない。
これは親関係でなんかあったなと俺は推測した。
「いつでも相談とか愚痴とか聞くからなんでも言って」
「さすが悠だね」
キーンコーンカーンコーン
気づいたら学校のチャイムが鳴っていた。
「うわ、、、やべ、、、」
「ごめんね」
「凪咲が謝る必要ないよ。このまま学校サボるか?」
「うん。私1回学校サボってみたかったの」
っていつもように俺を見る凪咲がいた。
この時間が止まればいいって心の底から思った。
この後2人の間に次々と困難な状況があることを知らなかったのだ。