俺は今ただ立ち尽くして教室の窓を眺めていた。

「はぁ〜俺のどこが悪いっていうんだよ」

頭を掻きむしりながら愚痴をこぼす。そして、喪失感ともに生きていくことをなくしかけていた。
ほんの数分前に付き合っていた彼女から呼び出された。
「ごめん別れよう」という言葉だけ残して彼女は去っていった。理由とか聞ける時間などなかった。でも薄々勘づいていた。どうせ別れるということに。だから俺は追いかけなかった。追いかけたら何か変われる?そんなことはドラマや恋愛漫画じゃないから変わることなんてないと頭の中で考えてた。

「まぁ今に始まったことじゃないから今回は直ぐに忘れそうだな」
そう今回で5回目の失恋。しかも5回ともフラれるという悪い結果。しかもしかも5回ともに1週間で別れを告げられる最悪な学生生活なのだ。

「次こそ恋なんてしない」って使命に燃えている。
恋なんてしようと思うと出来なくて今はいいやって思うと出来るってテレビの特番でやってたのを今思い出す。
今のご時世は草食男子が増えてるの俺は感じてる。
あ、俺は神咲 悠(かんざき はる)
身長は少し高めで端正な顔立ちだと周りの友達からは言われてる。
なのにフラれ続ける意味が俺には分からない。

「さあ帰ろかな」
俺はスクールバックを肩にかけて誰もいない廊下をスタスタ歩く。
俺が住んでいる所はド田舎の中のド田舎。森と田んぼしかない何もない所だ。だから電車も少なく学校まで自転車で通ってる。

「あー人生つまらん」
こんな人生終わった方がいいと何度も思った。頑張って生きていることに正直バカバカしい。勉強、部活、バイト、そして恋愛、すべてのことにおいて絶望を感じている。
このまま虚しく過ごすのかと思うとめっちゃ怖く思った。

「ほんと俺ホントの恋したい!」って大声で田んぼ道を自転車を漕いでると向かい側からセミロングで童顔の女の子が来た。
もー恋なんてしないとか言ってた俺がまた恋しようとしてる。
「もーだめなんだって」
自分に言うように言い聞かせてた。
女の子が通り過ぎると心臓の音がバクバクってうるさかった。同じ制服だったからまた会えるかなって密かに思ってた。

次の日昨日の女の子がいないかキョロキョロしてると、「おい、何キョロキョロしてんだよ」って肘で小突いて来る男がきた。名前は田瀬 巧(たぜ たくみ)だ。
「なんでもねぇよ」
「なんでもなくはないやろ」
「ほんとになんでもねえから」
「教えてくれよー」
「やだ」
「やっぱなんかあんじゃん」
「しつこいなー」
こんな感じの毎日で絡んでくる。
結構楽しいのは巧には伝えてない。
すると、廊下に昨日の女の子がいた。
話しかけようと近づくがなかなか踏み出せなかった。
キーンコーンカーンコーン
「あー情けねえ」
学校のチャイムとともに教室の自分の椅子に腰掛ける。
肘ついて窓の外を見ながらため息をつく。

その日の午後。
俺が廊下を歩いてると後ろから「あのー?」って呼びかけられた。振り返るとなんと昨日の女の子だった。
「は、はいどうしましたか?!」って同い年なのに敬語で話してしまった。突然すぎて頭は真っ白。
「昨日自転車ですれ違った人ですよね?」
「え、お、はいそうです!」
「あまり見かけない人だから気になってました」
「俺もです!」
あまりのことで思考回路がめちゃくちゃ。
でも気になる人からの呼びかけは想像を絶する興奮と高揚感に襲われた。
「なんていうですか?」
「はる!悠々自適の悠です!なんていうですか?」
「私は凪咲!凪に咲くでなぎさって言います!」
「じゃあ凪咲って呼んでいいですか?」
「はい!私は悠って呼ぶね!」
「お互いにタメで呼び合わない?」
「うん!!」
柴田 凪咲って言うって後で知ったけど、小柄であどけない顔して絶対モテるやんっていうような女の子なのだ。
笑った顔が一番可愛い。
やっぱり恋愛したいって強く思った。
「悠は何組?」
「俺は2組、凪咲は?」
「私は4組」
「じゃあ帰り一緒に帰らない?」
「え、いいよ!!」
「いいの?」
「うん!」
凪咲は少し顔を赤らめて頷いた。
俺も凪咲につられるように赤らめた。
キーンコーンカーンコーン
「あ、行きなきゃ」
「そうだね、また帰りに校門で待ってるよ」
「うん!待ってて!じゃあまたね!」
凪咲はそう言いながら自分の教室に戻る。
「ちょっとこれは頑張らなくちゃ」
俺は凪咲に恋した。
「好きだ」ってこの想いを伝えると心に決めた。
そして、純粋な気持ちが湧き上がってくるのを感じた。