「ああ、そうですか!お前は困らねえもんな!」


ひとりで怒り、勝手に納得した様子の李央。


「じゃあ入ってきてくれ」


そう顧問が指示すると、体育館の扉が開いた。


そして姿が見えた時、思わず、


「…げ」


心の声が漏れた。


しかし、その声は一瞬にして周りの声にかき消された。


「4組の佐々木さんじゃねえか!」


「まじか!」


「美人な人きたー!!」


部員の歓喜の声に包まれながら入ってきたのは佐々木だった。


「佐々木瞳です。精一杯頑張るので、仲良くしてくれたら嬉しいです」


遠慮がちな装いをしながらこっちまでやって来た佐々木は軽く自己紹介をした。


そして今日から実際にマネージャーとして動くことになった。


その後顧問が佐々木に倉庫内の説明をするよう一年に指示すると、体育倉庫の方へと歩いていった。


「というわけだ。お前らよろしく頼むぞ」


そう言いながら、顧問は頭をがしがしと掻き、少し表情を曇らせた。


「まぁ、佐々木は要領もいいし大丈夫だとは思うが…」


「先生なんか浮かない顔してるけどどうしたんすか?」


顧問の異変に気づいた部員がそう尋ねると、ポツリと話し始めた。


「いや、な。佐々木が入ってくれたのはありがたいんだが、うちは人数も多いしもう一人採用しようと思っていたんだがな」


そう言いつつ、体育館の入り口にはびこっている女子生徒に視線を向ける。


「私もやりたかったのにー」


「バスケ部の人と仲良くなれる機会なんてそうそうないのにぃ」


「審査基準厳しすぎじゃない?」


「あ!せんぱーい!こっち見て〜!」


…ああ、そういうことか。


「あの態度じゃな。採用しようにもできないな」


佐々木はうわべがいいから通ったんだろうけど。


他の生徒じゃそうもいかないか。


「ちなみにどんな基準なんすか?」


「練習中のサポートは前提として、今度ある合宿で食事や洗濯、雑務全般をやってくれるやつを探してたんだ」