「なんでキスなんかしたんですか」


未だに定まりきっていない視界で長谷川君を捉えて、見つめながら言う。


「キスなんて長谷川君にとっては挨拶みたいなものかもしれないですけど、私にとっては違うんです!」


長谷川君と一緒にしないでください。


私と長谷川君じゃ住む世界が違うんです。


「長谷川君があんなこと…するから…」


「地味子落ち着け」


私のただならぬオーラを感じたのだろうか。


でも、もはや呂律も回ってきていない私はもう止められない。


「うるらい!長谷川君のばか!…なんで意地悪するんれすか、なんで私をこんなに困らせるんですか」


「…」


「わらしの気持ちなんて知らないくせに…」


長谷川君なんか嫌いなのに、ライバルなのに。


どこで道を踏み外してしまったんだろう、私の人生。


「長谷川君といると胸が苦しくなる…」


そして、ずっと自分の中に居座っていたもやもやした気持ちを吐き出した。


そのとたん、私の意識はそこで途絶えた。

























side光輝



数分の間、俺は口を開くことができなかった。


そして地味子は


「長谷川君といると胸が苦しくなる」


この言葉を最後に、何かの糸が切れたように意識を失った。