もう嫌だ。


わからないことばかりだ。


私の胸の中は事件以来もやもやとした気持ちで充満していた。


そんな矢先、佐々木さんと長谷川君が巡回しているところをたまたま見かけてしまった。


ふたりとも美男美女で、まさに仮装通り王子様とお姫様みたいだった。


佐々木さんが長谷川君に近寄り、手を長谷川君の腕にかけた時、


胸がちくりと痛んだ。


少し切ないような痛み。


だけど、自分でもこの痛みの正体は分からなくて、胸の中のもやもやが増しただけだった。


自分の知らない感情に戸惑いを隠せなかった私は、気持ちを紛らわせるために委員会の仕事を詰め込むようにした。


その間は、他のことを考えなくて済むから。


それなのに長谷川君は夢の中にも出てきて、また私を困らせる。


「お前、倉庫で倒れてたんだぞ」


なんでそんな言い方するのよ。


それじゃまるで、


「大丈夫か」


私のこと心配してるみたいじゃない。


夢の中だからそんなこと言うの?


いつも意地悪なことばかり言ってくるくせに。


私のことなんてお構いなしでするくせに。


こんな時だけ優しいなんて、ずるい。


「…ない」


「え?」


「…大丈夫なわけ、ないじゃない」


そう言い、体を少し起こす。


もう、いいや。


どうせ夢なんだから、全て吐き出してしちゃえばいいんだ。


全部、全部、長谷川君のせい。


「なんで…」


自分の中で、煮詰まりすぎた思いを私は柄にもなく感情に任せて言い放った。