帰り道。

途中で会田さん、小村さんと別れる。

どうやら、浜岡さんとは家の方向が大体一緒のようだ。

「桑野さん、今日はありがとう。いろいろ話してくれて」

「うん」

お礼を言いたいのは、こっちのほうだ。

浜岡さんはこんな私に、声を掛けてくれた。

私の言葉に耳を傾けてくれた。

浜岡さんがいなかったら、きっと新生活は暗いものになっていただろう。

いじめの経験を引きずったままの私だっただろう。

「ありがとう。私を誘ってくれて」

だから、お礼を言った。

「うん!」

これから、どうなるかはわからない。

でも、少しでも変われるように頑張りたい。

急に、浜岡さんが立ち止まった。

「あ、あのね、桑野さん」

何だろう。

浜岡さんは何かを言おうと迷っている。

「どうしたの?」

「……やっぱり、何でもない。じゃあね」

一瞬だけ、浜岡さんの表情に影が落ちた気がした。




家に着いた。

「今日も遅かったわね。まあ、昨日よりは早いけど。早く夕飯の買い物行ってよね」

叔母さんが玄関で待ち構えていた。

私は聞き流し、2階に行く。

荷物を置いて、着替えてから夕飯の材料を買いに向かった。