そんな中、私は唯一大学受験を視野に入れていない人間だった。
だからクラスメイトが自習している教室に入るとヒヤリと空気が寒くなる。
みんなの走らせるシャーペンの音が一斉に止まって、また再開する。

もちろんおはようの挨拶なんてない。
みんな私のことなど御構い無し。
例えば空気とか、そんな存在と似たようなもの。

私は、いてもいなくても、変わらない存在。


わかってる。
必要以上に関わりは持たないことを。
それが単に私の「就職する」という事実だけからきているのではないことを頭では理解しているが、その空気が嫌で朝はギリギリまで教室にはいかないことにしている。

その代わりどこで時間を潰しているのかといえば、化学室裏の小さな花壇だった。

昨日は登校時間ギリギリに校門をくぐったから、花壇に寄ることをすっかり忘れて下校してしまった。
運動場も体育館の前も通り過ぎて、裏門の方へ歩みを進めた。