作業をしながら隣りに立つ水沢を横目で見る。


プリントをめくる、長い指。
時々考え込むように、うなる低い声。


仕事モードの水沢はいつもの倍、輝いて見える。


好きになったきっかけは、仕事熱心なところ。
どんな小さな仕事にも責任をもち、丁寧にこなす。



今だってそう。

頼まれた仕事を嫌な顔ひとつせずテキパキとこなしている。


水沢を慕っている後輩は多く、彼の頼みなら心よく引き受けてくれると思うのに。



終電を逃す覚悟で、自ら業務に没頭している。




口は悪くて、冷たくて。

最低な男には間違いないないけれど、



私が惚れるくらい、素敵な面もたくさんもっている。




嫌な部分を帳消しにするくらいの魅力を持った、私の大好きな人。







2人きりの会議室で作業することも本当は嫌じゃない。



私だけに手伝えと、
頼んでくれたことさえもちょっぴり嬉しいと感じてしまう心は、
水沢によって狂わされている。




日曜の映画も、手帳に二重丸を書いたりして。


水沢より私の方が何倍も日曜を楽しみにしている。




…仕方ない、彼のために頑張るか。


空調の音が聞こえるくらい静まった会議室で私も黙々と手を動かした。