そっとドアを開けた。
壁にもたれ掛かった水沢はニヤリと笑った。
「遅せーよ」
「ごめん」
「早くしないと映画に間に合わないだろ!」
「本当に行くの?」
ピンクのワンピースに着替え、メイクもして、外に出る準備は完璧なのだけど。
はっきり言って、乗り気ではない。
ていうか、この展開はなに!?
水沢、普通なんですけどーーこれが大人の余裕?モテる男の余裕ってやつ?
「私は二股とか掛けられて、耐えられる女じゃないよ」
「はぁ?」
何言ってんだ、コイツ。
水沢はそんな表情をした。
「彼女、いるでしょ」
「おう」
潔く認めやがった……。
呆れて言葉を失った私を置いて、歩き出す。
徐々に開いて行く距離。
このまま水沢のペースにのせられたら、また同じ日常が繰り返されるだけ。
結局、少しも変われないなんて。
告白した意味がない。
「水沢、彼女がいるならさ。私に構わないで。アンタのそういう態度が私のことを傷付けてるんだよ」
「……さっきの彼女ってのは、おまえのこと」
水沢は歩みを止めることなく、言葉を続けた。
「今日からおまえは俺の彼女だろ?違うか?」
「どういう意味?」
「…デートしてくれたら教える」
「何を?」
もうそれ以上は答えるつもりがないらしく、さっさと階段を降りて行った。玄関の鍵を閉め、その後ろ姿を急ぎ足で追う。


