「向日さん、キャラバンのアポの件だけ連絡してくるから、次の打ち合わせの準備頼んでいい?」

「はいっ」

「よろしくね」


奥田マネージャーはデスクに戻るとさっそく受話器を手に取った。

私は急ぎ次の打ち合わせの準備に入る。

このあとの打ち合わせは、会場で流すコンセプトムービーについてのものだ。

本来の予定では、この打ち合わせは明後日の午前中に行われるものだった。

けれど、コンセプトムービー撮影に合わせ谷川さんがまた帰国してくれることになったので、今回の打ち合わせに彼女がビデオ通話で参加することとなった。

その際、時差を考慮し、カメラマンである鳳さんのOKも出たので急遽今日の午後に変更したのだ。

いくつかの資料を箱に詰め、ビデオ通話ができる会議室へと入室する。

会議まではあと十五分ほどあるけれど、回線がちゃんと繋がるか先に試しておくようにと昨夜、家のリビングで仕事をしていた東雲部長から言われていた。

なので、持ってきた箱を会議テーブルの上に置くと、私はさっそくモニターの電源を入れる。

と、その時だ。


「あれ? 少し早かったかなー」


背後から芝居がかったような声が聞こえて振り向くと、入り口に鳳さんが立っていた。