「向日、もう終わったのか?」
「い、いえ。少し煮詰まってしまったので休憩を」
「ならさっさと戻るぞ」
鳳さんから引き離すように東雲部長が私の腕を引いて立ち上がらせて。
その様子を鳳さんはクスクスと肩を揺らして見ている。
部長は無言で鳳さんを一瞥し、私の腕から手を離さないまま歩き出した。
「亜湖ちゃん、俺が手伝ってやろうか?」
背中から聞こえてくる声に応えるべく顔だけで振り返り口を開いたけれど。
「お前は邪魔だから帰れ」
私の代わりに部長のそっけない声が答える。
そして流石というべきか、鳳さんの「はいはーい」と軽く流す声に私は苦笑していると、部長はなぜエレベーターを素通りした。
「し、東雲部長? エレベーターは」
と、質問している間に、部長は私の腕を強く掴んだまま非常階段の扉を開ける。
まさか、広報の階まで階段を使うつもりでは。
突然の体育会系展開に慄いていると、東雲部長が階段の手前で私を振り返り、不機嫌マックスな瞳に私を映した。
そして──。
「鳳に隙を見せないようにしろと言ったはずだ」
怒気を滲ませた声が鼓膜を刺激した。



