「モデルさんの顔立ちと今回のコンセプトを考えると、リップはこっちの色で、ヘアももう少しアレンジしたいのよ。今のままでも素敵だけど、彼女の顔立ちならもう少し攻めてもいけそうじゃない?」


肩で切りそろえられた明るい金髪に、四十代後半とは思えない程若々しくハリのある白い肌。

メリハリのある体は羨ましいくらいにスタイル抜群で。


「そうですね。じゃあ、少し変えてみましょうか」

「Merci! きっと気に入ってもらえると思うのよね」


毎日が輝き、充実しているのが感じられるような笑顔がなんとも魅力的な女性。

彼女が、東雲部長に目標を与えた谷川まりあさん。

朝、名刺交換した際には爽やかで活気溢れるようなフレグランスの香りが鼻を擽った。

楽しいことをしに来たのだとばかりの瞳は少し子供みたいで、だけどそれもまた可愛らしく、自然と惹き付けられてしまう。

まだほんの数時間、会話なんて数えられるほどしかないのに。

私はすでに、若かりし頃の東雲部長のように彼女の影響を受け始めていた。

奥田マネージャーといい、谷川さんといい、仕事に前向きな女性の姿は本当に素敵だ。

私も早く、ここにいるスペシャリストの方々と肩を並べて仕事ができるよう、頑張ろう。

意気込みを胸に、ドリンクの入った紙コップの蓋を閉めると、奥田さんの「十分ほど休憩にします」との声がちょうどかかった。