テーマ変更の影響で、毎日打ち合わせを繰り返す忙殺の日々を過ごすこと一週間。

力いっぱい鳴く蝉の声にも聞き慣れてきた八月初旬、本日。


「由香子さん、今データ確認しときます?」

「はい。……いいですね。さすが鳳さんです」

「ハハッ、ありがとう。これは特に角度にこだわったんだ」


午前中から行われているプレスリリースに向けてのスチール撮影は順調に進んでいた。

いつもはヘラヘラしている鳳さんも、カメラを構えればやはりプロ。

カメラ越しのモデルに真剣な視線を注ぎ、次々とシャッターを切っていく。

もちろん、鳳さんの要望に的確に応えていくモデルさんもプロだ。

プロフェッショナルな人が集まるスタジオ内は華やかで、けれどしっかりとした緊張感も漂っている。

そして、プロフェッショナルと言えばもう一人。


「東雲君。メイクのことで少し相談いい?」


ちょうど耳に入ったその人の凛とした声に、休憩の準備をしていた私は重なる紙コップを手にしたままそっと視線をやった。