「簡単なものでいい。プレゼンの資料は作れるか」
「あ、明後日までにですか?」
「そうだ」
できなくはない。
さっきの案であれば、明日、一日まるまる使えば用意できる。
だけど……すでに発表会に向けて動いているのだ。
わざわざ相談する価値が私の案にあるのか。
場をかき回し、時間の無駄になるのではと無意識のうちに顔を俯かせ懸念していたら、東雲部長が「向日」と私を呼んだ。
視線ごと顔を上向かせると、東雲部長の瞳が柔らかく細められて。
「お前のアイデアは悪くない。俺が保証する」
だから自信を持てと励ましてくれた。
ああ、そうだ。
東雲部長は、いいと思ったものはすぐ実行してみる人だった。
そして、様々なプロジェクトで手腕を発揮し成功をおさめてきた人。
そんな東雲部長が推してくれているのだ。
結果のことを考えるのは後。
まずは最大限にアピールすることを第一に頑張ってみよう。
奥田マネージャーのようなPRを目指して。
「はいっ。頑張ります」
東雲部長の期待にも応えられるようにとしっかりと頷いてみせれば、部長はビールグラスを手に取ると……。
「ああ、期待している」
優しく双眸を細め、とても綺麗に微笑んだ。
初めて見る彼のはっきりとした微笑みに、胸が否応なしに高鳴っていく。
それどころか、しばらく忘れていたはずの気持ちが、急激に膨れ上がったのを感じて。
夕食が終わるまでしばらく、私は部長の瞳をまともに見ることができないでいた。



