御曹司とおためし新婚生活



でも、そうか。どうりで見つけられなかったはずだ。

実は、モデル時代の部長を拝むべく、帰りの電車に揺られながらネットで東雲部長の名前で検索をかけてみた。

でも、それらしき写真が出てこなくて、ヒットするのは明倫堂で働く東雲部長のインタビュー記事くらい。

きっと名前も変えて活動していたのだろう。

部長は、味付けをしフライパンに蓋を被せると、火を弱火にし腕時計を見た。

どうやらここから煮込むようだ。

その間に片づけるようにと洗い物を私に差し出しながら、部長は口を開く。


「……以前、俺は女をあまり信用していないと話したが、その理由がモデルをしていたことに関係している」


だから、自分からはあまり進んで話をしないのだと、部長は続けた。


「そ、そうなんですね。でも、プロフィールがほとんど非公開のモデルって、ミステリアスで人気出そう」

「……まさにそれだ。それが変に興味を煽ることになった」

「誰の、ですか?」

「同じモデルの仲間だったり、仕事相手だったり。さらに、俺の家のことを知ると、目の色を変えて、媚び売って……誰もが”俺”を見てはいなかった」

「東雲部長の、家?」


首を傾げるも、部長はそんな私に何も言わない。

つまり、教えるつもりはないということなんだろう。