「……大丈夫かな、この結婚生活」
思わず声に出してしまうと、また東雲部長がこちらをちらりと見た。
い、いけない。
最初から弱気になってどうする私。
強い心を身に着け、メンタル最強のキャリアウーマンになるのだと決めたのだ。
半年間、やり切ってみせようじゃないの。
私は湯気の立つコーヒーカップを手にすると、笑顔で東雲部長に近づいた。
「どうぞ」
コーヒーをガラステーブルにそっと置くと、東雲部長は「ありがとう」と礼を口にする。
「で、初日から根をあげるのか?」
「やっぱり聞こえちゃいました?」
「向日の声は良く通るし、耳触りがいいからな」
「……そう、ですか?」
これはもしや声を褒めてもらえているのだろうか。
今まで特に意識したことのない自分の声。
人が耳にしているのと自分が耳にしているのとは音が違うとどこかで聞いたことがあるけれど、部長にとって、私の声は好ましいということなのかな。
ちょっと嬉しいかも。



