「片づけは終わったのか?」


いつの間に帰っていたのか。

清潔感のある白いリネンシャツとチノパンという休日スタイルの東雲部長が私を見下ろした。


「終わりました……」


あなたの中で人としても終わりましたよと心の中で毒づきながら上体を起こすと、東雲部長は「そうか」と短く言って隣に座る。

瞬間、彼のコロンだろうか。

ソープのような清潔感のある香りが鼻をくすぐる。


「夕飯にするが、何か食べたいものはあるか」


問われて、もうそんな時間かと腕時計を確認すると、気付けば午後七時を回るところだった。

いつも仕事が終わって帰宅してから夕食を摂る為、この時間はまだお腹が空いていないことが多い。

でも、今日は引っ越し作業で体を動かしたせいか、夕飯と言われて初めて空腹を感じていることに気付く。


「そうですね……お蕎麦はお昼で食べちゃいましたし、たくさん動いてお腹ペコペコなのでガッツリいけるけどカロリー高くないのがいいです」

「低カロリーでガッツリってなんだ」

「美味しくてお腹にたまる低カロリーのものってことです」

「腹にたまるものは大抵高カロリーだろうが」

「知ってます。でも質問に正直に答えたらそうなりました」