金曜日、午前十時六分。

広めの会議室に東雲部長の低く落ち着いた声が響く。


「シャルマントを愛用している年齢層は二十代から四十代と幅広い。昨年のプレスプレビューに続き、今年もその名のごとく”魅力”を意識したイベントはもちろんだが、コンセプトをどう活かして魅せるかがポイントだろう」


プロジェクターに映し出されているのは、シャルマントの新作となる口紅のイメージ図。

スタッフの手元には、シャルマントの新作に関する資料。

プラス、十二月に開催される新作発表会に向けての資料だ。

今はこの新作発表会に向けての会議に集中すべきなのは百も承知。

けれど。


「先月に行われた秋冬向けの発表会でデビューした新スキンケアラインのクラルテは、名の由来である”透明”に合わせガラスに囲まれたイベント会場となった。見た目も涼やかで評判もよく、発表後の反応も好調。シャルマントもこれに続きたい」


東雲部長の姿を見るだけで、昨夜の超展開を思い出し落ち着かないのだ。