「ぶ、部長……?」

「ひとつ、気になっていたことがある」

「なんですか?」


繋いだ手を互いの体の間で隠すようにしながら彼を見上げると、真斗さんは薄い唇を開いた。


「お前が結婚に期待していない理由はなんだ」


問われ、そういえばきちんと話したことがないことに気付く。


「元カレとの同棲が原因なんです」


以前付き合っていた彼は、同棲した途端に「俺は夢の為に生きる」と勤めていた会社をやめてひもになり、あげくギャンブルにはまって借金までこさえてきた。

当然、揉めに揉め別れるに至り……。


「また似たようなことになるのは嫌だなって、結婚……というか、結婚生活に希望が持てなくなりました」


一度あることは二度、三度あるというし、今までの彼氏も頼りになる人は少なかったので私は男を見る目がないのだと思っていた。

そんな経験から、私はあの同棲を最後に恋愛をしてこなかったわけだけど。

こうして真斗さんと寄り添うようになるなんて、想像もしていなかった。