要点を押さえた彼の説明は、少し早口だけど丁寧でわかりやすかった。でも一問解いたところで、お腹がグ~と鳴ってしまう。
私のお腹の音、聞こえたよね?
隣にチラリと視線を向ければ、彼が教科書をパタンと閉じた。
「食べたら?」
ベンチの脇に置いたおにぎりを、彼は顎で指し示す。
「うん。そうする」
彼は昼食に焼きそばパンを食べたけれど、なにも食べていない私は腹ペコだ。
「いただきます」と挨拶すると、海苔で巻かれた三角形のおにぎりをパクリと頬張った。具は鮭でこれといって特徴のないおにぎりだけど、お腹が空いている今の私にはごちそうだ。
「それ、自分で作ったのか?」
「まさか。ママが握ってくれた」
ダンスの練習ばかりしている私は料理はおろか、掃除や洗濯もすべて母親任せ。でもそれは私だけじゃない。真美や愛梨と菜々美も、母親が作ってくれたお弁当を食べている。
「……いい母親だな」
母親は毎日欠かさずにお弁当を作ってくれるけれど、私の顔を見れば「勉強しないさいよ」と口うるさい。
彼の『いい母親だな』という言葉に素直に同意はできない。
「そう? 普通じゃない?」
「……」
彼は黙ったまま、おにぎりを頬張る私から視線を逸らした。
ふたりの間に沈黙が流れる。


