私と彼は友だちでもなんでもない。だから挨拶する必要もない。けれど、無視するのも大人げないような気がしてしまい、彼が近づいてくるのをこの場で待つことにした。

「なに?」

私の少し手前で足を止めた彼が、首をひねる。

彼に用があって、裏庭を訪れたわけじゃない。でも考えごとをしていたら、いつの間にかこの場所に来ていたと説明するのは面倒くさいし恥ずかしい。

「べ、別に……なにも……」

居心地の悪さを感じながら、素気なく答える。しかし彼は、私の様子など気にも留めてないようだ。

「あ、そ。で? 結果、どうだった?」

彼はそう言うと、裏庭のベンチに腰を下ろした。

「……五位入賞」

「へえ、すごいな」

出場校が三十校で五位入賞は立派な成績。でも私は胸を張ることができない。

「ちっともすごくないよ。私は優勝して全国大会に出場することを目標にしていたんだから」

「……」

努力が報われなかったことが悔しくて、つい愚痴をこぼしてしまった。けれど興奮している私とは対照的に、彼は口を固く閉じたまま動かない。そんな彼の様子を見て、ハッと我に返った。