「未来、おはよう」

「おはよう」

登校した私をいつもと同じように迎え入れてくれたのは、クラスメイトの愛梨と菜々美。ふたりには、昨日のうちに五位入賞という結果を知らせてある。

「ねえ、未来。今日の放課後だけどカラオケ行かない?」

席に着くなり、愛梨に誘われる。

愛梨は思うような結果を出せずに気落ちしている私を元気づけようとしてくれるのだと、すぐにわかった。

彼女の気遣いはとてもうれしい。でも今は歌を歌う気分にはなれない。

「ごめんね。今日はもう予定が入っていて……」

誘いを遠回しに断ると、愛梨はすぐに納得してくれた。

「そっか。じゃあカラオケは今度行こうね」

「うん。ありがとう」

本当は予定などなにもない。

愛梨と菜々美に嘘をついてしまったことが、心苦しかった。



すでに次の大会へ向けて気持ちを切り替えている真美とは違い、私の心はいつまで経っても沈んだまま。気が緩むとジワリと涙が込み上げてきてしまう私は、かなりの重症だ。

このままウジウジメソメソしていたら、真美にもクラスメイトの愛梨と菜々美にも嫌われてしまう。

「ごめん。先に食べてて」

愛梨と菜々美と告げると、教室を後にした。