「真美は絶対メンバーに選ばれるよ」

ダンス部をまとめている部長の美南と副部長の紫織は、メンバー入り確実。それから部員の中でダンス歴が一番長い由香、明るい性格でムードメーカー的な存在の理穂もメンバーに選ばれると私は確信している。そして真美もメンバー入りを果たすはず。

そう信じて疑わない私の耳に聞こえてきたのは、凛とした真美の言葉だった。

「私は未来と一緒に、プラザホールのステージに立ちたいと思っているから」

駅に向かっていた足を止めた真美の澄んだ瞳が、私を真っ直ぐ見据える。

私よりダンス歴が長くてうまく踊る部員が大勢いる中、メンバーに選ばれるのは簡単なことではない。

真美と一緒にいるのは楽しいけれど、時々どうしようもない劣等感に襲われることがある。

平凡な私は、華がある真美とは違う。

自信なく「私は無理だよ」と小さな声で返事をすれば、真美が丸まった私の背中をトンと叩く。

「ねえ、未来。明日から特訓ね」

「えっ、特訓?」

真美の口から唐突に飛び出した『特訓』という提案に驚き、瞬きをパチクリと繰り返す。そんな私の目の前で、真美の口角がニヤリと上がった。

「そ。みっちり指導するから覚悟してよ」

「あ、うん……」

真美に手取り足取り指導してもらえば、選抜メンバー入りも夢じゃない。でも特訓までするほど、ダンスに熱くなれないというのが私の本音。