母親のすすり泣く声につられるように、瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

昨夜、私は佐伯のおばあちゃんと会った。お醤油を切らしたと言って、フフフッと照れたように微笑んだおばあちゃんの顔が鮮明によみがえる。と同時に思い出すのは、名前も知らない彼が口にした『あのバアさん、死ぬぜ。そしてオマエもな』という言葉。

あれは昼寝を邪魔されたことへの嫌がらせ。彼の言うことはデタラメだと真美も言っていたし、私も信じていなかった。

けれど今では、佐伯のおばあちゃんが亡くなることを的中させた彼が死神のように思えてならない。

私も死ぬの?

死を意識した途端に、恐怖で体が震え出す。ふらつく足を後退させると、尻もちをつくようにポスンとソファに座り込んだ。

「未来、大丈夫か?」

私を心配げに覗き込む父親の顔が、ゆらゆらと揺れてよく見えない。

「パパ、ママ……」

隣にいる母親の胸に頬を寄せると、子供のように泣きじゃくった。



佐伯のおばあちゃんが亡くなった二日後。帰りのホームルームが終わると、真美とともに学校を後にする。放課後練習に参加せずに帰るのは、佐伯のおばあちゃんのお通夜に参列するため。

どんよりとした灰色の雲が広がる中、真美と葬儀会場に向かった。



おばあちゃん、今までありがとう。

穏やかな笑みを浮かべる佐伯のおばあちゃんの遺影に向かって手を合わせる。高齢で身寄りも少ないせいか、参列者の姿があまりないお通夜が寂しかった。