彼に後をつけられた翌日の土曜日。どんぐり公園で真美と待ち合わせると、さつき台駅に向かう。

昨日の出来事は、まだ真美に打ち明けていない。話そうかどうしようかと悩んでしまうのは、真美は言いたいことをハッキリと口にする性格だから。

後をつけられて脅されたことを真美に話したら、三年生の教室をひとつひとつ回って彼を見つけ出し、胸ぐらを掴んで文句を言いかねない。

カナちゃんのときのように、大きな騒ぎになって悪目立ちするのは絶対に嫌だ。

昨日のことは真美には内緒にすると決めると、昨日の夜に放送されたドラマの話をした。




持久力をつけるランニングに、柔軟性を身に着けるストレッチ。苦手とする基礎練習を黙々と続けるのは、体を動かしていた方が余計なことを考えずに済むから。彼のことも、昨日の出来事も、もう忘れたい。

「未来、気合い入ってるね」

「まあね」

「この調子なら昼休みの特訓なしでも、メンバー入りも夢じゃないね」

体幹を鍛えるトレーニングをこなしながら、真美と会話を交わす。

特訓なしはうれしい。でも私よりうまく踊る部員はたくさんいる。

真美には「そうだね。がんばる」と答えたけれど、心の中ではそんな簡単にメンバー入りできるわけないと思ってしまう。

徐々に近づいてくる選考会の日が、憂鬱に感じた。