「今度、未来ちゃんの好きなおはぎを作るから、食べに来てね」

「ありがとう」

あんこをたっぷり使った、おばあちゃんの手作りおはぎは私の大好物。母親もお菓子を作ってくれるけれど、プリンやマフィンといったような洋菓子が圧倒的に多い。

私を孫のようにかわいがってくれることがうれしい。佐伯のおばあちゃんと並んでほっこりとした時間を過ごしていると、背後からまさかの声が聞こえてきた。

「おい。そこのちっちゃいの」

聞き覚えのある低い声と、独特な私の呼び方。夜道に響くのは間違いなく、裏庭で会った彼の声だ。今は隣に並んでいる佐伯のおばあちゃんの方がちっちゃいけれど、そんなことはどうでもいい。

恐怖におののきながら足を止めて振り返ると、やはりそこには裏庭で会った彼の姿があった。

「ななな、なんで?」

名前も知らない彼が、どうして私の地元であるこの場所にいるのかわからない。

「未来ちゃん。もしかして彼氏?」

突然の出来事に驚き立ち尽くす私に聞こえてきたのは、佐伯のおばあちゃんの見当違いな質問。学校の裏庭で私を脅し、地元にまで姿を現したヤバいコイツが彼氏のわけがない。