「まずはアイソレからね」

「えっ、アイソレ?」

真美が口にした『アイソレ』とはアイソレーションの略。首や肩、胸や腰など体のパーツを単独で動かすトレーニングのことを指す。

昼休みは新人大会で披露するダンスの特訓をするものだと思い込んでいた私にとってアイソレの指示は予想外。思わずキョトンとする私を見た真美が、再びクスッと笑った。

「未来って基礎練、嫌いでしょ?」

「……うん」

「だから昼休みは基礎を中心に練習しようと思ったんだ」

「……」

真美の言う通り、私は同じことを繰り返すだけの基礎練習は嫌い。

図星を突かれ、言い返す言葉が見つからない。いたたまれなくなった私は真美から視線を逸らすと、黙ったままうつむいた。

「別に未来を責めているんじゃないからね。ただ基礎練をおろそかにはできないから」

「うん。……わかってる」

基礎練習が大事なことくらい、真美に言われなくてもわかっている。でも単調な基礎練習はつらいだけで、ちっとも楽しくない。

もう選抜メンバーとか特訓だとか、どうでもいい。ただ私は文化祭のときのように、楽しくダンスができれば満足なのだから。

もう真美に軽蔑されてもいい。幼なじみであり親友である真美に、隠しごとをしていることが心苦しい。

「真美、あのね……」

うつむいていた顔を上げて、今の自分の気持ちを真美に伝えるために口を開く。でも……。