クルリと上を向くまつげと、艶やかに光る唇。徐々に近づいてくる紀香の顔には、少し濃い目の化粧が施されていた。

私と真美は、宙高く舞ってスパイクを決める中学時代の紀香の姿しか知らない。

たった一年半会わない間にすっかり大人びた紀香がまぶしく見る。でも私と真美に気づいたら「久しぶり!」と中学生の頃と変わらない笑顔を見せてくれるものと信じていた。

けれど横断歩道の中央ですれ違っても、紀香はスマホを耳にあててゲラゲラと笑うだけ。

結局、こちらも声をかけるタイミングを失い、横断歩道を渡り切ってしまった。

真美と一緒に振り返り、紀香の後ろ姿を見つめる。

「紀香……ちょっと変わっちゃったね」

踊るときに邪魔にならないようにと、ひとつに束ねた髪の毛を丸めたお団子ヘアの私たちとは違い、キャラメル色の長い巻き髪を揺らして歩く紀香の後ろ姿を見つめた真美が小さな声で言う。

「そうだね」

「駅の方に向かっているってことは、これから遊びに行くのかな?」

「……彼氏とデートかもね」

私と真美は高校二年生の十七歳。ダンス漬けの毎日を過ごしていても、オシャレに興味があるし、彼氏とデートするかもしれない同級生をうらやましくも思う。

私たちとは違う高校生活を送っていそうな紀香のことを気にしながら背を向けると、家に向かって再び足を進めた。