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未来……嘘ついてごめん。

死ぬのは未来じゃなくて、俺なんだ。

俺が見えたのは、自分に取り憑く命を喰らう魔物の姿。そして目を凝らした先に見えたのは、見ず知らずの女の子を助ける自分の姿だったんだ。

納得できなかった。

なんで俺ばかり、こんな目に遭うのかと……。

死が近づいてくるのを、ひとりでじっと待つのは怖い。冷たいマンションの一室でひとりで泣いたのは数知れないし、何度も気が狂いそうになった。

そんなとき、裏庭で未来と出会ったんだ。

目を凝らしたときにしか見えなかった女の子が、自分の目の前にいることが信じられなかった。と同時に、こうも思った。

なんでコイツを庇って、自分が死ななければならないのかって……。

だから俺は憂さを晴らすために、未来に『オマエさ……近いうちに死ぬぜ』と嘘をついた。すると未来の顔が恐怖で歪んだ。その表情を見たら少しだけ心が晴れたことに気づいた。

その後も未来の後をつけて脅し、怯える未来を見て陰で笑った。

好きなダンスに身が入らなくなるほど、恐怖を味わえばいいと思った。でも未来は毎日熱心にダンスの練習に打ち込んでいった。