「好きなものこそ理屈じゃどうにもならねぇんだよ。その時のことは忘れられないかもしれないけど、鷹野は鷹野の気持ちに正直になればいい。自分にしかそれはできないんだからな」

その通りだよ、脩。

もう、どうにもなってない。

「都ー?」

「鷹野ー?」

恐る恐る声を揃えてドアからひょっこり現れた充希と沖田くん。

「ごめん、心配させて。もう大丈夫だから」

近づいてきた充希は私の顔を見てハッ、とすると勢い良く振り返って脩のことを睨み付けた。

「都に何言ったの!?」

「はぁ?何がだよ」

「都、泣かせたんでしょ!」

「俺じゃねぇよ。勝手にそいつが泣いたんだ」

「み、充希。そう、何でもないよ。脩のせいでもないし」

「都が何にも無くて泣くわけないっ」

「鷹野が違うって言ってんだろ。友達なら信じてやれよ」

「脩は口が悪いだけで、言うことには脩なりの優しさが含まれてるはずだから許してやって!」

「沖田のそれは、俺のフォローをしてるつもりか?」

「当たり前じゃん。試合後の審判押し付けて、血相変えて鷹野のこと探しに行った脩のことは、ここに来るまでにも安心するように充希ちゃんにフォローしてるしっ!?」

脩は沖田くんの首を華麗に締めると、沖田くんは苦しそうに脩の腕を叩いた。

「お前、何を言った?内容によっては締める」

「脩!もう締まってるって!沖田くん死んじゃう!」

充希には、きっとわかってもらえないかもしれないけど、脩は結構、いやかなりいい奴。

誤解ばかり生んでしまうのが玉に瑕だけど、私は脩の良いところをたくさん知っている。

確かに、理屈じゃどうにもならない。