過去の自分を消したいと願いつつ、自分がその過去にすがりついているんだろうか。
あの時の自分ならば、こんなはずじゃなかったと嘆いて今を見ていないのは、私自身のせいなんだろうか。
過去の自分を知る場所を避けて、誰かが自分を知っているんじゃないかと怯えているのは、自意識の塊。
脩は目の前で次々とパネルを撃ち抜いていく。
正確なコントロール。
力みのないフォームからの速球。
何なの。私との違いを見せつけて何がしたいの。
挫折していなければ、私だって、きっと。
勢い良くバッティングの金網ドアを開け、お金を入れて目の前の画面を睨みつける。
画面の投手が振りかぶると同時に、バットを握る手に力を込め、ボールが飛び出して来たことを確認して思い切りスイングする。
そのままの勢いで空振りし、ボールが後ろの壁にぶつかって跳ねる。
気にせず次のボールのために構え直す。
「おい、それ、ここで一番速いやつ」
隣で脩が何か言っているが、構わず前を見据える。
飛んで来たボールに今度はバットを擦り、後ろに大きく飛び上がる。
その跳ね返って来たボールが一度バウンドして腰の辺りに当たったけど、少しの痛みはすぐに消えた。
「やめろって。怪我すんぞ」
脩が言ったと同時に、バットに当たったボールは斜め上方向に勢い良く飛んだ。
キンッ、という金属音が響く。
ボールが飛んだ先を息を切らしながら、呆然と眺めた。

