青夏ダイヤモンド


「脩のフォームに私、正直言って見惚れたよ」

しなやかに移り変わる体の動きを見た時、体の中で何かが大きく揺れ動いた。

ボールがミットに届いた後にやっと、時の流れが元の状態に戻ったかのような錯覚を覚えた。

視界から脩の姿しか見えなくなって、周りが無音になっていたことに、後から気づいた。

「やな奴だね。そんなフォームができるのに、私に投げさせるなんて」

野球なんてやったことのない初心者だったなら、脩のフォームを見たって、こんな惨めな気持ちにならなかったかもしれない。

今になって、何故、ブランクのある自分が乱れたフォームを晒さなければならないのか。

「お前、何でそんなに後ろ向きなの?」

「元からこういう性格なだけだよ」

「球技大会なんて遊びだろ。それともやるなら勝ちてぇの?そんなら、徹底的に練習やらせるけど」

「もちろん遊びだよ。勝ち負けなんてどうでもいい」

遠巻きに様子を伺っている野球部員が気になり始め、私は話を終わらせて立ち上がって「行こう」と充希に声をかけて逃げるようにグラウンドを立ち去った。