青夏ダイヤモンド



「脩は緊張しないの?」

「しない。楽しみしかない」

「強靭な心臓だなぁ」

「野球をやれるのが楽しいからな」

本当に緊張なんてしてなくて、心の底から楽しんでいることが普段は表情の変化に乏しい脩の顔からも伺える。

「最後だし、悔いなく楽しみたいよな」

「泣いても笑っても高校最後だもんね」

「俺、大学では野球やらないつもり」

「え、部活無いとか?」

「いや、あるけどやらない」

どういうことなのかわからなくて、首を傾げていると脩が微笑を浮かべる。

「サポート役に徹するって決めた」

「そう、なの?」

「どっちも中途半端にしたくないからな」

野球を心底楽しいと思っている脩が野球をやらない決断をするには、どれだけの苦悩があったんだろう。

「鷹野がそんな顔するなよ」

無意識に唇を噛み締めていて、脩は私の頭に手を置いた。

私は野球から逃げただけだけど、それでも野球をやれなくなったことに悔しさや悲しさなど負の感情が織り混ざったものが頭の中を巡っていたことを思い出す。