青夏ダイヤモンド



「何もできなくてごめん。でも、脩が辛い時に私が何も知らないのは嫌だ。私にも共有してほしい。肩を直したりはできないけど、私がいることで、少しでも脩の気持ちを軽くできないのかな」

うつ伏せの脩の顔は枕に埋まって見えない。

私は恐る恐る脩の肩に触れ、優しく撫でる。

そうしていると、脩の手が私の手を握り、枕に埋めていた顔を私に向けた。

「情け無いって思った」

布団に口が触れているから、その声はくぐもって聞こえた。

「最後の大会前に、体調管理できないピッチャーなんて最低だ。だから、鷹野には知られたくなかったんだよ」

おそらく成南ピッチャーは脩にかなり頼っているところがあり、投球数も当然多くなる。

だからこそ、厳格な体調管理が強いられるのだけれども、やはり怪我のリスクは高くなるものだ。

そんな言い訳は少しもせずに、自分を責める脩のことを情け無いと思うわけがなかった。

「私、どんな脩でも好きだよ。無理にかっこつけたりしなくたっていい」

「好きな奴の前ではかっこつけたいんだよ」

寝返りを打って仰向けになると、自分の額の上に腕を置いて息を吐いた。

「朝のこと、ごめん。完全に八つ当たり。俺、すげぇ、酷いこと言った。あんなこと言いたいわけじゃなかった」

また深く息を吐き、その反動を使うように体を起こした。

「本当に、ごめん」

私は立ち上がって、ベットの上で改めて頭を深く下げた脩の頭を抱きしめた。

「うん。仲直りね」

脩も遅れて私の背中に手を回す。

「しばらくこうしてたい。鷹野の言う通り、気持ちが軽くなる」

体の中に響いた脩の声に、少しだけ抱きしめる力を強めて、頷いた。