「遠距離恋愛の話?」
「遠距離じゃなくても一緒です。学年が違う俺には都さんの環境を理解できることはないんです」
翔馬くんは私の手を捕まえ、唇を強く噛んだ。
「俺、都さんが好きです」
真っ直ぐに射抜くように見つめられた。
「中川先輩のことで悲しそうにする都さんをもう見たくないです」
息を飲む様子があって、翔馬くんの手から緊張感が伝わってくるようだった。
この先、悩むことも辛いこともあるのかもしれないし、不安になってしまうこともあるかもしれないけれど、なぜか脩への気持ちは揺らぐ気はしなかった。
細く息を吐き、翔馬くんの目から逃げないように瞳に力を込める。
「ごめんね。翔馬くんの気持ちには答えられない」
翔馬くんの手に自分の手を重ね、ゆっくりと解く。
翔馬くんの視線から力が消え、溜め込んでいた息を強く吐いた。
「ちょっとくらい迷ってくれるかと思ったのに全然でしたね」
「ご、ごめん」
「逆に諦めつきますけどね。でも、弱ってる都さんを次見たら、漬け込みますよ?」
電車が来ると、いつもの笑顔で翔馬くんは私を見送り、自分は後の電車に乗ると言って残った。
翔馬くんに背中を押してもらう形になったが、自分の気持ちがわかった今、次に私がやることは決まっていた。

