青夏ダイヤモンド



翔馬くんは小さく息を吐いた。

「何で中川先輩なんですか?」

「何で、って」

「振り回されてるじゃないですか。どうせ遠距離になるんだし、不安だらけじゃないですか。それでも、中川先輩なんですか?」

翔馬くんの無邪気さは完全に隠れていて、唇を噛み締め必死な表情だった。

「この先もきっとこういうこと、あるんじゃないですか?そのたびに辛い思いするかもしれないですよ。そんなの、嫌じゃないんですか?」

この先を考えて、容易に想像できてしまった。

そのせいで、小さく笑うと翔馬くんが訝しげな顔をした。

「辛い思いするのは嫌だけどね。でも、脩は私のこと見捨てたことないから、私も脩のこと見捨てない。それに、脩も結構私に振り回されたと思ってるんじゃないかな」

「相手の環境を完全に理解することはできない、ってことですか」

聞いたことのある言葉に、ふと思い出す。