「脩っ!飲み物くらい出しなさいよっ!」

ドアが叩かれると、脩は舌打ちをして乱暴にドアを開けた。

「今から持ってくるとこ!」

「もう持って来たわよっ。私、出かけるから、おかわりとかちゃんとやんなさいよ!」

「いちいち母さんみたいなこと言うなっ!」

お姉さんがまだ何か言おうとしていたのに、脩はお盆を引ったくって、ドアを閉めてしまった。

2人のやり取りと、脩の反応が新鮮でくすくす笑っていると、脩に笑うな、と釘を刺された。

「脩って、お母さんにもあんな感じで言われてるの?」

「うちの女達はお節介なんだよ。何もできないガキだと思ってる」

「脩のことが可愛いんだねー」

「どこが。煩わしいったらねぇ」

少しだけ、家族の中にいる脩の想像ができて、知らなかった脩の一面が見られて嬉しくなった。


飲み物を貰って、お菓子を食べながら2人で無言で漫画を読み進めた。

集中してきて、どんどん先に読み進んで行くと、追いついてしまったらしく、次の巻は脩がまだ読んでいた。

「ねぇ、脩。それ、見たい」

「今、いいとこ」

「脩、後でも見れるじゃん」

「今見たい」

「早くー」

真剣な表情で漫画を読んでいる脩の横顔が視界に入って、ドキッとした。

前髪、ちょっと長くなってきてる。

邪魔にならないのかなぁ。

「あの、さ。そんな見られると集中できないんだけど」

気づかれていたのかっ。

漫画から目を離した脩が苦笑を浮かべた。