2回目の脩の部屋だけど、あの時から全く変わっていないように見えた。

入り口付近で突っ立っていると、脩に促されてテーブルの前に座った。

「お姉さん、綺麗な人だね」

「中身は伴ってないけどな」

会話が続けられなくて、しん、と静まってしまう。

「漫画、持って来る」

脩が部屋を出て行ったので、少し気持ちが和らいで、ホッとしてしまった。

お姉さんがいたことによって、ホッとしたような、でも少し残念だったような。

どうしたいんだ、私。

ふと、本棚の横にあったメダルが無くなっていることに気が付いた。

他は変わっていないようなのに、唯一見つけた間違い探し。

そういえば、あのメダルを見た時に自分のメダルも探してみようと思ったのだ。

見たくもなかった、小学校の野球の思い出を掘り起こそうとできるようになっている自分に少し驚いていた。

「これに全部入ってると思う」

ダンボールを抱えて戻って来た脩は、私の目の前にそれを置いた。

「メダル、どこ行ったの?」

本棚の横を指差すと、察したようだった。

「飾っておくの恥ずかしくなった。あれは、棚ぼた優勝だったし。鷹野がいないから勝ったようなもんだったからな」

「そんなこと、ないと思うけど」

「そういや、鷹野は完封達成してたよな。その前の大会。あれやられた時には悔しすぎて、来年負かしてやるって思って練習して、最後の大会は後一息で完封勝利だったんだ。あー、なんか思い出して来た」

「そう、だっけ」

「負かしてやる、って思ったのにいねぇんだもんなぁ」

その時の追憶をしているのか、どこか遠くを見ていた。

「その子はもういないよ。現れない」

「知ってる。あれが俺の糧になってるのは事実だけど、会いたいとはもう思ってないよ」

自分に全く自信がなかったけれど、脩のおかげで自分のことを認めてあげられるようになったのだと思う。

こうして晴れやかな新学期を迎えることができたのだから。