脩は玄関に入るなり、並んでいる靴を見下ろしちょっと待ってて、と先にリビングの方に入って行った。

鼓動は更に早鐘を打っている。

どうしよう。ついに家に来ちゃった。

前回来た時は充希も沖田くんもいたから、自然に中に入れたけれど、今は手も足も震える。

玄関の前で直立していると、廊下の奥のドアが勢い良く開き、Tシャツスエットで濡れた長い髪をタオルで拭きながら綺麗な女の人が現れた。

だ、誰?

「え?お客さん?あ、脩の?」

私の制服を見てか、状況を少し理解したらしい女性だったが、私の方は全く状況が把握できていなかった。

「脩ー!帰ってるの?お客さん、玄関に放置してないで部屋にあげなさいよー!」

家中に響くような大きな声を出すと、バタバタとリビングのドアから脩が出て来た。

「やっぱり姉ちゃんかっ。帰って来るなら連絡してから帰って来いよ!」

お姉さんだったのか。

そう言われてみれば、脩と似ているような気もする。

「実家なんだからいいでしょー。それとも、私が帰って来たら都合悪いわけ?家族不在時に彼女連れてくるなんて、我が弟ながら感心したわー」

「るせぇっなっ!そんなんじゃねぇ!」

「初めましてー。脩の姉の美咲です。口の悪い弟ですけど、見捨てないでやってねー」

「は、初めましてっ。鷹野都です。脩くんにはお世話になっています」

慌てて頭を下げると、優しい笑顔でお姉さんも頭を下げた。

「鷹野、上行くぞ」

一刻も早くここから逃げ出したいのか、脩はもう階段を上がり始めていたので、私はもう一度頭を下げてその後に続いた。