青夏ダイヤモンド



塾のバイトでは数学だけではなく、たまに英語もサブに入って教えることもあった。

「鷹野さん、教え方上手いって生徒からも評判だよ。成績伸びた子も結構いるし」

「私もすごく勉強になってますし、ほぼ同年代の私の説明を素直に聞いてくれて、嬉しいです」

根気良く説明を続けていけば、どんな子でも閃く時がやってくることが、ここ最近ではわかっていたから、その子が何につまずいていて、何にひっかかっているのか話を聞きながら、スムーズに導けるよう、経験を積みながら私も日々学ばせてもらっている。


中学3年生は受験を見据えたプリントを黙々とこなしていた。

翔馬くんは野球に没頭しすぎて勉強をおざなりにしていたようで、最初の頃は中学1年生のプリントから始めたらしいが、今はみんなと同じように中学3年生の受験対策をしている。

教えているとわかるが、彼は本来容量の良い子で、基礎さえ固めてきっかけを作れば素直な性格も相まって吸収が早く、応用力にも長けていた。

「都さん、特別講習いないんですか?」

授業が終わった後、受験生には任意で参加できる年末年始の特別講習のスケジュールが配られたのだが、講師の名前を見て翔馬くんが声をあげる。

「わかったー。彼氏とデートなんだっ」

「う、うん」

「えー、いいなー」

別の男子生徒が乗り出すと、女子生徒が羨ましそうに頬杖をついた。

それもそうなのだが、特別講習は中3しかないので元々いる大学生だけが担当することが決まっていただけだ。

それでも、私の彼氏がどんな人か、どこが好きなのか、と質問責めに合うことになり、曖昧に答えて追い立てるように全員を帰した。

脩が私のことを彼女と認めてくれていることがわかって、私も誰かに彼氏がいるのか、と聞かれて疑いなく頷けるようになれたのはちょっとした進歩だ。