嫌悪感を感じているのに、謝ったりすることもできそうになくて、ただ足元を見ていると、脩が立ち上がるのを気配で感じた。
ああ、さすがに脩も嫌になって同じ場所にすらいたくなくなってしまったか。
そう思っていたら、隣の席に重さが加わった。
え、と隣を見ると、脩が隣に座り、2人の間に隠すように私の手を握った。
「これでも、やっぱり不安?」
脩らしくもない自信なさげな声色で目も合わせない。
「不安にさせてる気は無かった」
悪かった、と言う脩の声が愛しくて、握られた手に力を込める。
「私、脩の彼女になれてる?」
「そこからかよ?」
「だって、付き合おうとかいう話、してなかったし」
「話してなくても、そういう流れになるだろ、普通」
「私は脩が初めてなんだから普通とかわからないんだよ。経験豊富な脩と違って」
「遊び人みたいに言うな。俺だって鷹野のこと、ちゃんと考えてるよ」
付き合いたいと思ってないとか、一緒にいられるだけでいいとか、クリスマス会えればいいとか、そう思っていたのは確かなのに、それだけじゃ足りなくなっていく。
脩にとって早すぎるこの電車に乗ってくるのだって、会えない時間を脩なりに埋めてくれているんだってわかっていたのに。
「ごめん。なんか、どんどん欲深くなってる」
「意外。鷹野って、淡白な方だと思ってた。付き合っても自分の時間は大切にしたい派、っての?」
「そっち派だと思う、けど、違ってるのかも。脩だってそっち派じゃないの?」
「そうだけど、もう少し解放できる」
「解放?」
「そ。俺、割とセーブしてるんだけど、鷹野が欲深くなるなら、俺も遠慮しなくていいよな」
「遠慮してたの?そんなのいらないよ」
「あ、そ?じゃあ、お構いなく」
脩は素早く私の髪にキスをした。
「だ、誰か見てたらどうするのっ」
「見てなかったからしたんだよ。誰もいなかったら、ちゃんと口にしてる。遠慮するなって言ったのは鷹野だろ」
不敵に笑みを浮かべた脩をかっこいいと思うことが悔しくて、唇を強く噛みながらも顔が熱かった。

