「好き、です」

こぼれるように出た小さな言葉を言ったら、もう止まらなくなった。

「脩が好き。私、脩が好きだよ。誰にも取られたくないよっ」

溢れ出る言葉と共に涙も止まらなくなった。

脩に掴まれていた手は引き寄せられ、脩に抱き竦められていた。

肩と背中に回された脩の手が小刻みに震えているような気がした。

「しゅ、う・・・?」

私の肩に顔を埋めている脩の髪を恐る恐る撫でてみる。

整髪料も何も付けていない、柔らかい髪だ。

肩が軽くなると、ゆっくりと脩が顔を上げて、たった数十センチの距離から私を見つめる。

脩の瞳は黒だと思っていたけど、本当は濃い茶色で、本当は奥二重だったのか、と何故か冷静に脩の顔を観察していると、脩の顔が距離を詰めて来た。

「ま、待って」

体を引いて、思わず呟くと、脩の動きがピタリと止まる。

「どれくらい?」

「どれくらい、って」

「10秒・・・いや、5秒以上無理」

脩が何をしようとしているかわかっても、そのまま動けないでいた。

「時間切れ」

再び迫って来た脩の瞳が閉じられ、私もギュッと目を瞑り、脩の腕を掴んでいた手に力を込めた。

最初は唇に触れるか触れないかの感触、それだけで力が抜けて脩の腕に体を少し預けると、逆に脩の腕に力が入り、さっきより唇も強く押し当てられた。

いつもの乱暴な口調が嘘のように、私のことを優しく扱ってくれることが嬉しくて、温かい涙が頬を伝った。