一般公開の時間が終わると、外からの来客は帰されて、その後に後夜祭が成南生のみで行われる。
「後夜祭は約束しなかったの?」
後夜祭の準備ができるまでの時間、教室内の片付けを進めていると、充希が驚くように聞き返した。
「付き合ってもいないのに、後夜祭まで一緒にいるなんておかしくない?」
「何でー?結構いるよ?後夜祭で告る人」
「だからね、私は脩と付き合いたいとかそんなおこがましいことを思ってるわけじゃないんだってば」
「おこがましいって何でよ。都、何でそんな自信無いの?」
「脩と全然釣り合ってないの自覚あるんだよ。充希や谷下さんくらい可愛ければ、そんなことも考えず告白できるんだろうけど」
充希はまとめていたゴミ袋を床に乱暴に置いて、私に近づいて来た。
「何で釣り合わないといけないの?それって、誰の評価気にしてるの?自分がどうしたいかでしょ。付き合いたくないならそれでもいいけど、そんな理由で自分の気持ちに嘘つこうとしてるなら、さっさと脩のこと諦めた方いいよ」
辛辣だけど、正論過ぎて二の句も告げない。
「もう一個言うけど、さっき脩と美穂、どっか行ったから」
そういえば、脩の姿がさっきから見えない。
どこかでサボっているのかと気にも留めていなかったけど、2人でいなくなった、と聞かされて心が突然揺らいだ。
「脩のこと、取られてもいいの?」
脩と谷下さんなら並んでも違和感なくカップルに見える。
でも、そんな2人を私は平然な顔して見ることはできない。
「ね、ゴミ出し、お願いしていいかな」
「もちろん」
充希が満足気に微笑むと、私は教室を飛び出した。

