「あれ誰?」
脩に話しかけられて我に帰ると、反射的に首を振っていた。
「おすすめを、聞かれてただけ」
「あ、そ。俺達、休憩だとよ」
「もう、そんな時間か。いってらっしゃい」
「お前も行くんだよ」
「うん。準備してから行く」
「じゃあ、待ってるから準備して来い」
「ん?何で?」
「は?お前が言ったんだろ。一緒に回るって」
脩の顔を見ても冗談を言っているように見えなかった。
「あれは、充希が遠慮しないように、咄嗟に言ってしまったことで、本当に実行する必要はないから、脩は好きなように行動していいんだよ?」
「そんなんわかってたに決まってんだろ」
「わかってて、私と行くの?」
「そうだよ」
「誤解されるよ?まぁ、私は脩に釣り合ってないから誤解される可能性低いかもしれないけど」
翔馬くんを含めた中学生が写真を撮り終わり、出て行く間際に翔馬くんが小さく会釈をしたので、私もそれに倣う。
「うるせーんだよ。誤解とか人の目はどうでもいい。結局鷹野はどうしたいんだよ。孤独にうろうろしたいならそれでもいいけどな」
何か人の目を集め始めている気がする。
脩はだんだんと苛立ちを露わにしているけれど、私はほんとに?ほんとに?と高揚した気持ちを抑えながら繰り返していた。
「い、行こうっ」
その場から逃げ出したい一心もあったけど、廊下を歩き始めれば、賑やかなお祭り騒ぎも相まって、嬉しくて体がふわふわと軽くなったような気がした。

