「あ、ねえ、沖田くん。私と文化祭回ろうよ」
「え、いいの?」
「うん。都に許可もらったー。都は脩と回るんだって」
「は?」
やばっ。
「え!?嘘。脩と鷹野って、いつの間にそういう感じになってたの!?」
かなり刺々しい視線を横から感じる。
向けない。横は向けない。
「余り物同士で回るだけだよー」
お願い。脩もとりあえず合わせて。察して。
気持ちは手を火が出るほど擦り合わせ、拝むように横にいる脩に向かって念じた。
「鷹野引き受けるから、2人で行って来いよ」
通じた!
思わず横を向くと、私にしか見えていないのか、睨み付けるように見下ろされていて、再び視線を逸らす。
沖田くんは私達の関係をまだ疑っているようだったが、充希が小さくウインクしたのを一瞬見た。
もしかしたら、私が脩と回ると言った嘘を見抜いたのかもしれない。
だから、わざわざこのタイミングで脩にも伝えた。
でもまぁ、いいや。
ここではそういうことにしておくだけだ。
当日、実際に2人で回る事なんてないんだから。

