青夏ダイヤモンド



「イラつかせる奴がいなければ、俺の口も良くなると思うんだけどな?とりあえず今のところは無理だな」

もう声で誰かわかってしまったので、恐る恐る振り返ると、脩がレジ袋を両手に持って仁王立ちしていた。

「イラつかせているのは私ですか?」

「自覚ねぇのか。大層なことだな」

脩はレジ袋の1つを私達の前に置いた。

「何これ?」

「ヤマセンからの差し入れ」

担任が山本先生なので略してヤマセン。

「おーい、ヤマセンから差し入れだってー。アイスだから溶ける前に食べよー」

沖田くんも同じようにレジ袋を持って現れて、クラスメイトに声を掛けると、みんな手を止めて休憩に入った。

「色が入ってくるとますますいい感じだね」

アイスを配り終えた沖田くんは自分もアイスを口にしながら色塗り途中のパネルを見下ろした。

「だよね。当日ワクワクしてきたよ」

「写真撮ってどうすんだよ、って思うんだけどな」

「可愛いとか綺麗とか思ったものが消えないように写真に残しておくの。そうすると、その写真を見た時に思い出が蘇るでしょ」

充希が熱弁をふるったが、脩の反応は対照的にかなり冷めたものだった。