「どうだ。そろそろ吐く気になったか?」
鋭い爪が頬を滑った。
同時に、ピリッとした痛みを感じた。
きっと、肌を傷付けられたんだ。
椅子に縛り付けられた体は動けないまま、あたしは必死で思考を巡らせた。
知恵を使わなきゃ‥
なんとか このカエル男を騙して、ここから逃げなきゃ‥
漫画や小説なら、ピンチにはヒーローが現れるんだ。
今だって、こんな非現実的な馬鹿げた状況で現れても可笑しくないのに‥。
「吐け!ブラッディキスの在りかを!!」
目玉をギョロつかせて、カエル男が怒鳴った。
「は?なんで、あたしが お前みたいな珍獣に怒鳴られなあかんねんっ!」
作戦を考えるつもりだったのに、ブチ切れてしまった。
─ サイアク‥
そう思った時には遅かった。
カエル男は あたしの喉を目掛けて、その鋭利な爪を突き出した。


